犬の前十字靭帯断裂~症状と治療・予防法~
犬の前十字靭帯断裂~症状と治療・予防法~|川西市のミネルバ動物病院【犬猫専門】整形外科、手術
2024/07/20ケガ・病気
犬の前十字靭帯断裂~症状と治療・予防法~
犬の前十字靭帯断裂について、その症状と治療法についてご紹介いたします。
また愛犬への予防法についてもご紹介いたします。
犬の前十字靭帯断裂とは?
前十字靭帯は、膝関節のなかにあり、大腿骨(太ももの骨)の後ろ側と脛骨(脛の骨)の前側をつなぐもので、膝関節を安定化する役割があります。
前十字靭帯のおもな機能は以下のとおりです。
前十字靭帯のおもな機能
- 大腿骨に対して脛骨が前に滑りでないようにする
- 大腿骨に対して脛骨がねじれた位置に来ないようにする
- 膝が過剰に伸びないようにする
このような機能をもつ前十字靭帯が切れてしまうと、膝関節が不安定になり、後ろ足を引きずるようになります。
そのままにしておくと、そのうち関節軟骨が削れてしまい、変形性関節症と呼ばれる関節炎を引き起こす要因となります。
また、前十字靭帯断裂と同時に、膝関節のなかになる半月板が切れてしまうこともあります。
半月板は、クッションの役割をしており、神経や血管が走っているため、より痛みが激しく伴うようになります。
前十字靭帯断裂を発症した犬の約90%が半月板を損傷しているというデータもあります。
このように痛みをともなう前十字靭帯断裂ですが、実際にどのような犬がなりやすいのか見ていきましょう。
前十字靭帯断裂になりやすい犬とは?
前十字靭帯断裂になりやすい犬は、以下のような犬です。
- 中高齢の犬
- 大型犬
- 肥満傾向にある犬
- 避妊、去勢手術をしている犬
- 膝蓋骨脱臼(パテラ)になっている犬
前十字靭帯断裂は、中高齢の犬がなりやすいとされています。
一般的に、4歳以上の高齢犬に多く、平均7歳前後で発症するとされています。
また、ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー、アメリカン・スタッフォード・シャーテリア、セント・バーナード、秋田犬など比較的大型犬に多いとされている前十字靭帯断裂ですが、小型犬でも発症が見られるというデータもあります。
このほか、肥満や避妊・去勢をしている犬も発生する確率が高いとされています。
前十字靭帯断裂は、膝蓋骨内方脱臼と前十字靭帯断裂は、同時に起こることもしばしばあります。
そのため、若いうちに膝蓋骨内方脱臼を発症ひそのまま放置しておくことにより、中高齢になって前十字靭帯断裂を発症する可能性が高くなるのです。
それでは、実際に愛犬にどのような症状が出ていれば、前十字靭帯断裂の疑いがあるのか、見ていきましょう。
前十字靭帯断裂の症状
- 歩く際、後ろ足に力が入っていない
- 後ろ足を引きずる
- 後ろ足を地面につけないようおしり歩きをしている
愛犬にこのような症状が見られたら、前十字靭帯断裂を疑った方がよいでしょう。
例えば、
「椅子から飛び降りた直後にキャンと鳴き、後ろ足を完全に上げるようになった」
「全速力で走り回った直後から後ろ足を引きずるようになった」
このような事例が報告されています。
このように、愛犬のいつもの何気ない行動から気付くことが多くあります。
日頃から、愛犬の行動を気にかけておくことが大切です。
犬の前十字靭帯断裂の治療法とは?
治療法は、2つあります。
保存療法と手術です。
それぞれについて見ていきましょう。
保存療法
保存療法とは、患部を切らずに治療する方法です。
おもな治療は、
- 消炎鎮痛剤を用いて痛みを緩和する
- 安静にする
- 肥満の場合は減量を行なう
この3つが挙げられます。
靭帯が切れた関節は、安静にしておくことで関節周辺が硬くなり、2~3ケ月ほどで関節自体が安定化することがあります。
安定化するまでの間大きな力が加わると、安定化の妨げとなるため、徹底した安静が必要になります。
しかしながら、体重15kg以上の肥満傾向にある犬の場合、この治療法はうまくいかないことが多いため、減量が必要です。
このような方法により安定化し、一見通常どおり歩けるようになったとしても、一度切れてしまった靭帯は元には戻りません。
そのため、変形性関節症は、少しずつ進行していきます。
手術による治療
手術にも2種類あります。
- 関節外制動術
- 矯正骨切り術
関節外制動術は、前十字靭帯の代わりに糸で大腿骨と脛骨を結びつける方法です。
一方、矯正骨切り術は、歩行時、大腿骨と脛骨がずれて関節軟骨が損傷するのを矯正する手術です。
変形性関節症の進行を遅らせるには、矯正骨切り術の方が効果が高いとされています。
犬の前十字靭帯断裂の予防法
犬の前十字靭帯断裂の予防法は、はっきり言ってありません。
しかしながら、発症リスクを低くする方法はいくつかあります。
犬の前十字靭帯断裂のリスク要因のひとつに、肥満があります。
愛犬が肥満にならないように気を付けることで、犬の前十字靭帯断裂のリスクを減らすことは可能です。
また、膝蓋骨脱臼と前十字靭帯断裂は、同時に起こることが多いので、愛犬が膝蓋骨脱臼の疑いがあるようなら放置せず、若いうちに治療をしておくことが、前十字靭帯断裂のリスク回避につながります。
まとめ
犬の前十字靭帯断裂は、明確な予防法はありません。
しかしながら、
- 愛犬の様子を日頃からよく観察しおかしな点があれば動物病院を受診させる
- 肥満にならないよう愛犬の健康に気を付ける
など日頃から愛犬の様子を注意深く観察し、フードや運動など健康に気を付けることで、リスクを回避することは可能です。
それでも、前十字靭帯断裂になってしまったときには、早めに動物病院を受診し、適切な処置を行なうことが大切です。
大切な愛犬のために、飼い主さんができることをしっかりと行ないましょう。