愛犬に「パテラ(膝蓋骨脱臼)」の 疑いがあるときに考える 手術の必要性について
愛犬に「パテラ(膝蓋骨脱臼)」の 疑いがあるときに考える 手術の必要性について|川西市のミネルバ動物病院【犬猫専門】整形外科、手術
2024/04/25ケガ・病気
愛犬に「パテラ(膝蓋骨脱臼)」の 疑いがあるときに考える 手術の必要性について
- 愛犬にパテラ(膝蓋骨脱臼)の疑いがある
- 愛犬がパテラ(膝蓋骨脱臼)だと診断された
このような皆さまには、「手術」という選択をするべきかどうか悩んでいる方も多いと思います。
手術の必要性は、愛犬の年齢や症状によってさまざまです。
すぐに手術が必要な場合と、手術は必要ない場合、今すぐではなくてもいずれ手術が必要な場合があります。
ここでは、パテラ(膝蓋骨脱臼)のグレードや、手術の必要性について、また治療法などについてご紹介いたします。
パテラ(膝蓋骨脱臼)とはどんな病気?
パテラ(膝蓋骨脱臼)とは、膝蓋骨は本来、足の付け根からひざまでの太ももの骨である大腿骨にある滑車溝というくぼみにはまっています。
膝蓋骨が滑車溝に収まり、まっすぐ滑走することで、大腿四頭筋の力を脛骨に伝える働きをします。
これにより、膝関節を滑らかに、まっすぐ曲げ伸ばしすることができるのです。
しかしこれが、大腿骨滑車溝から外れてしまうことがあります。
こうなってしまうと、膝関節を伸ばせなくなります。
これが、パテラ(膝蓋骨脱臼)です。
膝の内側に外れる状態が「内方脱臼」、外側に外れる状態を「外方脱臼」、両方外れる状態を「両方向性脱臼」といい、内方脱臼がもっとも多く起こります。
全犬種に発症しうる病気ではありますが、特に多いのは、トイプードル、ポメラニアン、チワワ、ヨークシャーテリアなどの小型犬です。
パテラ(膝蓋骨脱臼)のグレード
パテラ(膝蓋骨脱臼)になれば、どのような症状が見られるのでしょうか?
パテラ(膝蓋骨脱臼)は4つグレードに分類されます。
それぞれのグレードについてご紹介いたします。
グレード1
普段は、膝蓋骨は滑車溝に収まっていますが、手で押すと脱臼する状態です。
ほとんど症状はありませんが、まれに外れた際には鳴いて後ろ足を挙げたり、スキップしたりするなどの症状が出ます。
歩き方も正常で、骨格や軟部組織には大きな問題がないので、手術の必要性はないことが多いです。
グレード2
普段は、膝蓋骨は滑車溝に収まっていますが、後ろ足を曲げた時に頻繁に脱臼する状態です。
後ろ足を曲げ伸ばしたり、手で押したりすると元の位置に戻ります。
脱臼時には後ろ足を床に着くことはできず、足を上げて急に痛がるといった症状が徐々に増えていきます。
脱臼が繰り返されるため、関節軟骨に潰瘍が生じ、関節炎を合併することが多く見られます。
そのまま放置しておくと、変性性関節症が進行していってしまいます。
足を引きずるような歩行が継続しているようであれば、手術の必要性が生じます。
グレード3
膝蓋骨が常に脱臼した状態です。
手で押すと一時的に滑車溝に戻りますが、すぐに外れます。
後ろ足を曲げ、腰を落とした状態で歩くなどの歩行異常がみられます。
グレード4
膝蓋骨は常に脱臼した状態です。
手で押しても元の位置に戻すことができません。
骨間接が著しく変形しているため、後ろ足を伸ばすことができません。
そのため、後ろ足を曲げたままの状態で、うずくまるように歩きます。
軟部組織が委縮し、筋肉が激しい繊維化を起こしている状態です。
パテラの原因は?
パテラの原因は、先天性と後天性の両方あります。
先天性の場合は、成長期に骨や靭帯、筋肉の形成に異常が生じることで発症します。
一方、後天性の場合は、交通事故や高いところから転落したことにより、膝に強い負担が生じたことが原因で発症します。
愛犬のパテラ治療について。手術の必要性はある?
パテラの治療法は、3種類です。
- ① 今すぐ手術が必要
- ② 今すぐではないが将来的には手術が必要
- ③ 手術はせず保存療法で経過をみる
保存療法を選択する場合は、症状がほとんどみられない場合や手術ができない場合です。
鎮痛剤やサプリメントの投与、運動の制限、生活環境の改善、減量などといった治療を行ないます。
しかしながら、これらの治療をしたからといって症状が改善されるわけではありません。
根治はしないため、症状が悪化する可能性もあります。
その場合は、手術という選択肢を迫られます。
骨格の成長が著しいと獣医師が認めた場合も、手術を勧められることがあります。
これは、パテラによって骨格や筋肉の形成異常が進行する可能性があるからです。
手術をした方がいいのはどのような場合?
パテラで手術を勧められるのは、下記のような場合です。
- 1歳以上の小型犬の試験で、痛みや機能障害がある場合
- 中~大型犬
- 12ケ月未満の若齢犬
- グレード3、グレード4の場合
中型~大型犬の場合は、グレードが低くても獣医師から手術を勧められるケースがほとんどです。
パテラの手術費は?
パテラの手術には、滑車溝を深くすることにより外れないようにする滑車造溝術や、ずれた頸骨粗面を正しい位置に移動させる脛骨粗面転位術など、犬種や年齢、グレードによっていくつかの術式があります。
術式や、症状、犬種、手術を受ける動物病院などによってさまざまですが、
術前検査で25,000円~30,000円
片足の手術費用が、300,000円~400,000円
入院費用(2~3日)は、15,000円~20,000円
で、大体340,000円~450,000円ぐらい手術にかかる費用が必要となります。
まとめ
愛犬が、パテラ(膝蓋骨脱臼)と診断されたら、飼い主さんは大変心配されることと思いますが、パテラと診断されても病気の進行を防ぐための対策はできます。
例えば・・・
- 肥満に注意し膝関節への負担を軽減してあげる
- フローリングなど滑りやすい床は症状が悪化する原因になるので、カーペットを敷くなど滑りにくい対策を取る
- 爪や肉球の間の毛が伸びていると滑りやすいので、定期的にお手入れをする
- 高いところから飛び降りたり、激しい回転運動などはやめさせる
愛犬のために、飼い主さんができることは、病気についての正しい理解を深め、適切な治療を受けさせる、病気が悪化しないよう気を付けることです。